Co2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 インテリジェント吸波式波力発電による地域経済循環ビジネスモデル実証事業 完了報告
Co2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業
(インテリジェント吸波式波力発電による地域経済循環ビジネスモデル実証事業)
完了報告書
令和5年10月
株式会社マリンエナジー
1.実証事業を終えて
令和2年度より開始された本事業では、東日本大震災の被災地である岩手県釜石市で、脱炭素社会に向け、地域資源である海洋を舞台として地元企業が実施主体となり地域のステークホルダーと連携し、再生可能エネルギーシステムを事業化することにより、資源及び経済の循環による地域活性化の推進を目的としてきました。
本事業では、地域企業が主体となり波力発電システムを設計、製造、実装することができた。またこれまでの波力発電システム開発では、地域企業が参画することを念頭に入れた導入ガイドラインは皆無であったが、各種許認可も含めた地域企業の参加を意識した事業実施ガイドライン作成のベースとなる導入フローを作り上げることができた。再生可能エネルギーの大規模展開は、一般的には地域企業が主体的に関わることが難しい事例が多い中、本事業の取り組みは地域企業の再エネ事業実現・参画に道筋を与えたと考えています。
今後地域経済循環ビジネスモデルの一部として、地域企業が積極的にかかわれるような設計・製造・導入方法をまとめることができました。
地域経済循環ビジネスモデルの検討としては、行政・地域金融機関・漁業関係者等のステークホルダーとともに実施してきた。製造・設置・運営を地域企業で担うことで幅広い地元企業への裨益が証明されただけでなく、漁業者の理解や協力の得やすさ、事業連携の可能性も見いだせています。
今後の展望として、防波堤を有する国内の沿岸各自治体や離島地域、漁業協同組合や地域新電力会社および海外輸出を取り扱う商社等、更にはODAへの採用による海外貢献も有望な展開対象であるとの結論に至りました。
本実証事業は、環境省地球環境局地球温暖化対策課地球温暖化対策事業室、プログラムオフィサー、検討委員のみなさま、そして多くのご協力とご指導に支えられ、無事に成功裏に終了いたしました。この場を借りて、深く感謝の意を表明いたします。
改めて、ご指導ご協力いただいた関係各位、そして地域の皆様に改めて心より感謝申し上げます。今後とも、ご支援賜りますようお願い申し上げます。
2.事業の概要
■環境省事業(「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」)について
【技術開発課題名】
「インテリジェント吸波式波力発電による地域経済循環ビジネスモデル実証事業」
【事業期間】令和2年12月16日~令和5年9月30日(6か月期間延長)
本実証試験について、今後の実用化と普及を進めるためには、通年での実証データの取得とより精度の高い発電量及び性能予測が必要となることから、実証期間を半年間延長した。
【事業予算】394,099千円
【実施海域】
・釜石沖海洋再生可能エネルギー実証フィールド湾口サイト内 釜石港湾口防波堤 北提
図1 釜石港事業実施海域
(1)実施目的
振動水柱型波力発電は長期運転信頼性が高いものの、高コストな設備費用や、高効率で発電可能な波条件が限られるという課題があった。
本プロジェクトでは波力発電の適地である太平洋岸の釜石湾口に設置された防波堤を利用することでイニシャルコストを低く抑え、なおかつ幅広い波条件で発電可能な新しいコンセプトの振動水柱型波力発電(インテリジェント吸波式波力発電)により、地域経済循環ビジネスモデルを作り上げることを目指す。オペレーション、メンテナンスのコストが大幅に抑えられる振動水柱型の利点はそのままに発電コストを低下し、さらに地域企業による製造・運用・電力利用が可能であり、地域産業への幅広い貢献という社会的意義も大きい。
(2)実施場所
①波力発電設備:釜石港湾口防波堤北提 浅部1区
②陸上観測所 :釜石市新浜町281-42
③波浪計測Ⅰ :釜石港湾口防波堤 深部
④波浪計測Ⅱ :岩手南部沖ナウファスと釜石港湾口防波堤間の海域
(水深100m付近)
・上記各項目の詳細な位置については次頁の図にそれぞれ示す。
図2 波力発電設置位置及び波浪計測関係位置図
(3)実施期間【実施スケジュール】
令和2年度 |
令和3年度 |
令和4年度 |
令和5年度 |
・基本設計 ・詳細設計 ・強度計算 ・水槽実験 |
・構造物強度実験 ・1次変換部製作 ・2次変換部製作 ・環境調査 |
・構造物設置 ・運転開始式 ・実証運転試験 (8カ月) |
・実証運転試験 (4カ月) ・実海域波浪計測 ・撤去 |
(4)実証試験内容
「地域企業が主体的に実現可能な事業化実用技術の開発」
①【低コストかつ安全な波吸収変換部の開発】
②【 AI機能を有するタービン発電機の開発】
③【周辺海域の波浪特性を考慮した発電量予測(実海域波浪観測)】
④【地域経済循環ビジネススキームの検討と評価】
⑤【釜石沖海洋資源利活用ネットワークとの連携】
⑥【実海域波浪観測】
【実海域波浪観測のねらい】
◆A⇔B⇔Cの波浪データの相関を検証することにより、将来の普及に資する発電量予測の精度の向上を図る。
◆B、C、X 3ヶ所のデータを比較し、波力発電の設置に関する最適位置や、設計条件の設定基準をまとめることが将来にわたる設計指針とすることも可能となる。
◆C地点の計測により、現状と同じ発電装置を設置したと仮定した時に得られる発電出力を推測し、現状の発電量と比較できる波エネルギー量や発電諸条件等を測定する。
◆これにより、地域経済循環ビジネスモデルの実現の可能性を高めることと、併せて他地域への横展開の基礎資料とする。